21世紀も30年目を迎えるころ、かつて大日本帝国と呼ばれたその国では経済の停滞による少子化とそれが助長させた世代間格差により年間自殺者が10万人を突破。
この数字自体は氷山の一角であったものの、報道されるやいなや国政に不満を持っていた平成生まれの国民の怒りに火がついた。
異常なまでの高齢社会の中で彼らの占める人口割合はごく僅かであると、自らの余生と同世代の国民からの票田のみを気にかけていた政治家達は当初これを無視していた。
しかし、全国に広がる暴動により最早法治国家としての体裁すら危うくなると対応せざるを得なくなり緊急法案を可決。
しかし世代間格差を是正する術は最早なく、代わりに生まれたのは通称「自殺補助法」。
生存権と同様に絶望した者には自らの意思で自らの生命を絶つ権利があるという名目で、地方自治体にて申請書を提出するだけで1か月以内に安楽死が受けられるという内容であった。当初は高齢者向けの制度として想定されていたものの、未来に絶望した数少ない若者の自殺者が急増。
インターネットでの炎上も空しく、また革命家気取りの学生運動家もその思想の浅はかさに呆れられる一方で人口ピラミッドは異常な勢いでバランスを失っていった。
統計上のトリックにより、この安楽死の死者数は自殺とは認められず年間自殺者数は数千人にまで減少。
プロパガンダでもなく、明日の食い扶持を稼ぎたいがために老人向けマスメディアはこの状況を絶賛したが、ついには自殺を前提とした人生設計が流行となった。進学率および就業率は年々低下する傍らで犯罪率は急上昇。申請後に殺人、窃盗、強姦を試みるものが多発。
人権派のパフォーマンスにより司法はそれらの行為を裁けず、また何よりかつて「働きざかり」と呼ばれた世代の絶望的な減少により警察は機能停止に陥った。
遂には子供を作ることが犯罪を生むという論説まで謳われるようになり最早出生率は限りなく0になった。
法案の可決から10年、ある街で今では「若者」と言われる老人が言う。
「それにしても最近年金の支給額が少ないけどどうしてかしらね。」
という話を会社からの帰り道に思い付いた。
意外と現実にあり得るかもしれんと思い選挙には行こうと思った32歳がこちらです。
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